免疫学:結核予防接種の効果を高める
Nature
2020年1月2日
結核のアカゲザルモデルを使った研究が行われ、BCGワクチンの投与量と投与経路を変えると、結核感染に対する防御能を上昇させられることが明らかになった。この研究で得られたデータからは、ワクチンの送達方法を皮内送達から静脈内送達に切り替えることが、青年や成人に投与する場合に特に有益である可能性が示唆されている。ただし、臨床試験を行う必要がある。この研究成果を報告した論文が掲載される。
BCGは、唯一の認可された結核ワクチンで、皮内投与されるが、青年と成人の肺感染症に対する効果が低い。皮内投与では、肺において感染症や疾患に対する高い防御を媒介するために必要とされる可能性の高い特異的なT細胞の出現頻度を高めに誘導できないのだ。今回、Robert Sederたちの研究グループは、BCGワクチンの投与量を増やして、静脈内送達すれば、肺において防御作用を持つT細胞の出現頻度が上昇するという仮説を立て、結核に対する感受性が高いアカゲザルを使って、この仮説を検証した。その結果、ヒトの標準投与量の100倍のBCGが静脈内投与された10匹のアカゲザルのうち9匹には、結核感染に対する高い防御が認められ、結核菌に曝露した場合には、10匹中6匹から感染の徴候が検出されなかった。これに対して、BCGの投与量を増やした皮内接種またはエアロゾル接種を受けた10匹のアカゲザルの中で、結核菌への曝露後に感染の徴候を示さなかったのは2匹のみだった。
Sederたちは、今回の研究で得られた知見は、青年や成人に対するBCGの静脈内送達を臨床開発することを支援する内容であり、これが、結核感染を減らすうえで最大の効果をもたらす可能性があるという見解を示しており、静脈内経路が、組織部位においてT細胞を誘導するように設計された他のワクチンの防御能力を高める可能性もあるという考えを示している。
doi:10.1038/s41586-019-1817-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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