【量子物理学】遠く離れた量子メモリーのエンタングルメント
Nature
2020年2月13日
50キロメートル離れた2つの量子メモリーのエンタングルメントが実証されたことを報告する論文が、Nature に掲載される。この距離は、これまでに報告されたものよりもかなり長く、複数のノード間の長距離エンタングルメントに道を開く可能性があり、量子インターネットの開発に役立つかもしれない。
量子通信には、エンタングルした粒子の伝送が必要となる。ここ20年間に遠隔エンタングルメントの実現に向けて著しい進歩があった。遠隔エンタングルメントは、エンタングルした光子が、光ファイバーまたは人工衛星を経由してノード間を伝送されることで実現される。しかし、大きな伝送損失が起こることが、光子分布の成功に対する制約となっている。さらに、通常のコンピューターメモリーの量子等価物である量子メモリーのエンタングルメントの距離は、1.3キロメートルまでしか実現しておらず、既存のシステムはスケーラブルでない可能性が示唆されている。
今回、Jian-Wei Pan、Xiao-Hui Baoたちの研究チームは、伝送中の光子の結合損失を低減する空洞強化と呼ばれる量子効果を利用して、原子-光子エンタングルメントを生成し、それらを通信に適した周波数に変換し、最大50キロメートルの光ケーブルで接続された2つのノード間のエンタングルメントに成功したことを報告している。50キロメートルは、都市間の接続を可能にする距離だ。今回の研究結果は、量子エンタングルメントの長距離伝送には、エンタングルした光子よりも一連のノードにわたる原子-光子エンタングルメントの方が適していることを実証している。
doi:10.1038/s41586-020-1976-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
環境:アマゾン先住民の領域が人間の健康に恩恵をもたらすCommunications Earth & Environment
-
動物学:タコはあらゆる作業に最適な腕を前面に出すScientific Reports
-
気候変動:主要な炭素排出源が熱波の強度と発生確率に影響を及ぼしているNature
-
惑星科学:地球近傍小惑星リュウグウの母天体には長い流体の歴史が存在するNature
-
古生物学:トカゲのような生物の起源をさらに遡るNature
-
惑星科学:火星の泥岩に残る特徴が古代の環境条件を解明する手がかりとなるNature