健康:妊娠中の母親の腸内微生物が乳児の食物アレルギーのリスクを低減する
Nature Communications
2020年3月25日
妊婦のマイクロバイオームに細菌Prevotella copriが含まれることは、その子が生後1年以内に食物アレルギーを起こすリスクが低いことと関連していることが明らかになった。この新知見について報告する論文が、Nature Communications に掲載される。
妊娠中の母親の腸内マイクロバイオームは、胎児の免疫系の発生・発達を促進する上で重要な役割を果たしている。これに対しては、特定の細菌種が存在していないことが、免疫関連疾患の発症リスクが高いことと関連しているとする学説が提起されている。
今回、Peter Vuillerminたちの研究チームは、オーストラリア人コホートの母親(1064人)の妊娠中の腸内マイクロバイオームを分析し、その子どもについて、1歳になるまで3か月ごとに調査を行った。この調査の結果、腸内細菌P. copriが検出された母親の子どもは食物アレルギーになりにくいことが分かった。こうした防御的関連性が最も多く見られたのは、脂肪分と繊維分の多い食餌を取る母親だった。また、大家族であることや妊娠第3三半期に抗生物質を投与されていないことが、妊娠中の腸内マイクロバイオームにP. copriが含まれることと相関していた。
今回の研究によって得られた知見を他の集団で裏付け、プロバイオティクスやバイオマーカーとしてのP. copriの可能性を評価するためには、さらなる研究が必要である。それでも、Vuillerminたちは、妊婦に対する抗生物質の投与管理や母親の腸内マイクロバイオームを最適な状態に維持する食餌の重要性が、今回の研究結果によって明確になったと考えている。
doi:10.1038/s41467-020-14552-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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