キラー電子はどこへ行った
Nature Physics
2012年1月30日
太陽からのエネルギーの大きな噴出物によって起こる磁気嵐は、地球を取り巻くバンアレン帯の中を光に近い速度で移動する高エネルギー電子の流れを駆動できる。このような「キラー電子」は、地球静止軌道にある通信衛星に被害を与えることがある。しかし、時には磁気嵐が逆の効果を生み、電子フラックスをほんの数時間で数桁も急激に減少させることがある。これまで、このキラー電子がどこへ消えたのかわからなかった。今回、地球上のさまざまな高度で集めたデータを用いて、その答えを見つけたかもしれない、Nature Physicsに報告される。 この謎を解くため、D Turnerたちは、2011年1月6日に起こった磁気嵐の時に収集されたデータを解析した。このデータ収集には、NASA、米国大気海洋庁、欧州気象衛星開発機構が別々に運用しているTHEMIS (Time History of Events and Macroscale Interactions during Substorms) ミッション、GOES(Geostationary Operational Environmental Satellite) ミッション、POES (Polar Operational Environmental Satellite)ミッションの総計11機の人工衛星と探査機が関与した。Turnerたちは、この磁気嵐の時に、外側のバンアレン帯の高エネルギー電子フラックスは、地球から離れる方向にバンアレン帯から外側へ放出されており、電子消失のいくつかの説明で示唆されているように地球大気に向かって内側へ送られたのではないことを見いだした。
doi:10.1038/nphys2185
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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