がん:「絶食模倣」食が化学療法の助けになるかもしれない
Nature Communications
2020年6月24日
絶食を模倣した食餌は、乳がん患者に対する最初の数回の化学療法の効果を増進する可能性のあることが、無作為化第II相比較臨床試験で示された。この結果について報告する論文が、Nature Communications に掲載される。絶食模倣食は、低カロリー・低タンパク質な食餌で、水分のみを摂取する絶食によって生じる代謝反応に類似した反応を誘発するために開発された。
短期絶食と絶食模倣食は、化学療法の際に健康な細胞を保護する一方、がん細胞に化学療法を効きやすくする効果のあることが、前臨床的証拠から示唆されている。しかし、がん患者に対する短期絶食の可能性を評価する臨床研究は、まだ初期段階にある。
今回、Judith Kroepたちが実施した臨床試験では、HER2陰性のステージII/IIIの乳がん患者129人が、ネオアジュバント化学療法(腫瘍を退縮させるための第1段階として手術前に行う治療)の3日前から実施期間中にわたって絶食模倣食か通常食のいずれかを取った。絶食模倣食は、野菜を使った低アミノ酸置換食で、スープ、ブロス、液体、茶からなる。絶食模倣食摂取群と対照群で、化学療法の毒性に差はなかったが、腫瘍応答に対するネオアジュバント化学療法の効果は、絶食模倣食摂取群の患者で増強されていた。現在、(無病)生存率に関する追跡調査が行われている。
今回の結果は、複数サイクルの絶食模倣食が、早期乳がんの女性が受ける化学療法の補助療法として安全かつ有効であることを示唆している。以上の知見は、前臨床データと共に、がん治療と絶食を組み合わせることの利点に関するさらなる探究を後押しする。
doi:10.1038/s41467-020-16138-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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