生物工学:生物工学で作った足場で子宮を修復し、ウサギに生仔を出産させる
Nature Biotechnology
2020年6月30日
ウサギの子宮の損傷を、そのウサギ自身の細胞を使った組織工学手法で修復したところ、10羽のうち4羽が正常に妊娠し、生仔を出産したことを報告する論文が、Nature Biotechnology に掲載される。この方法は将来的に、子宮が原因の不妊に悩む女性に重要な意味を持つ可能性がある。
不妊治療を受けている女性の約6%は、子宮に機能障害がある。生きているドナーや死亡したドナーから提供される子宮の移植によって、生児の出産が可能になっているが、提供される子宮が不足していることと、移植された子宮の維持に免疫抑制剤の投与が必要なことが、子宮移植の制約となっている。生物工学手法で、齧歯類の子宮の小さな損傷が修復できることは明らかになっているが、齧歯類やさらに大きな動物での生児の出産はいまだに成功していなかった。
今回Anthony Atalaたちは、78羽のウサギの損傷した子宮に、生分解性ポリマーの足場(マトリックス中にウサギ自身の子宮細胞を入れたものと、入れていないもの)を移植した。これらの子宮を1、3、6か月後に調べたところ、足場自体は移植の3か月後には分解されていた。移植後6か月後までに、本来の組織と生物工学による組織との間に、明らかな違いは認められなくなった。子宮細胞を植えた足場を移植したウサギ10羽のうち4羽は正常に妊娠・出産したが、細胞を植えない足場を移植した10羽では、1羽も妊娠が認められなかった。
これまで、同様の組織工学手法による足場を用いることで、ヒトの他の管状組織(膣、尿道、膀胱など)の修復に成功しており、今回の研究で用いられた方法は、ヒトにも応用できる可能性がある。しかしAtalaたちは、あらゆる動物で妊娠に成功したわけでないので、この方法をヒトで試す前に、動物での研究をさらに行う必要があると述べている。
doi:10.1038/s41587-020-0547-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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