物理学:研究室で実験を行うロボットの登場
Nature
2020年7月9日
自動車工場の組立ラインでよく見られるロボットを改造し、化学実験室において研究者のそばで稼働できるようにしたことを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。このロボットは機械学習アルゴリズムと連携しており、検証すべき仮説を示せば、実施すべき実験を選定できる。
自動化された化学実験装置は、産学いずれの実験室でも、ますます一般的になってきている。こうした自動化装置には、その場で分析と意思決定を行う機能が組み込まれており、ある程度の自律性が確保されている。しかし、化学ロボットは特注品であり、実験室内の実験機器や分析機器と接続するための特別なインターフェースや、ロボットだけが使用する機器類を必要とする。
今回、Andrew Cooperたちは論文の中で、化学者が使っている標準的な分析機器を人間と同じように使える改良型ロボットを作製して、機器ではなく研究者の自動化を図ったことを説明している。このロボットは、視覚システムではなく、レーザー走査法と接触フィードバックを併用して位置決めを行う。そのため、真っ暗な場所でも作動することができ、光に敏感な光化学反応を行う際に有用だ。また、このロボットは、人間と同じくらいの大きさで、通常の実験室を改造しなくても作動できる。多くの自動化システムは、液体の分注しかできないが、このロボットは、固体と液体の両方の分注を高い精度と再現性で行うことができ、材料研究における有用性の幅を広げている。
今回の研究で、Cooperたちは、高分子光触媒の性能を改善するためのさまざまな仮説を探究するようにロボットをプログラムした。反応条件の最適化は、人間が行うと数カ月を要すると予想されるが、このロボットは2~3日で達成した。Cooperたちは、このロボットを通常の実験室に配置して、光触媒以外にもさまざまな研究課題を解決するために使用できるという考えを示している。
doi:10.1038/s41586-020-2442-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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