気候科学:グリーンランド氷床の質量減少が2019年に記録的な水準に達した
Communications Earth & Environment
2020年8月21日
2019年のグリーンランド氷床の質量減少が2012年の記録を15%上回った反面、2017~2018年の2年間の質量減少は、2003~2019年のいずれの2年間よりも少なかったことを報告する論文が、Communications Earth & Environment に掲載される。
グリーンランド氷床は、海水準上昇に最も大きく寄与している要因の1つであり、2005~2017年の全球平均海水準上昇(年間約3.5ミリメートル)のうちの年間約0.76ミリメートルの上昇に関連している。GRACE(Gravity Recovery and Climate Experiment)衛星とその後継機GRACE-FOによるミッションで、重力変化を追跡観測して、氷の質量減少を定量化できるようになった。
今回、Ingo Sasgenたちの研究チームは、この2つの衛星ミッション(2003~2019年)で得られたデータを解析し、2017~2018年の氷床の質量減少が異常に低レベルになり、翌年の2019年に約532ギガトンという記録的な質量減少になったことを明らかにした。Sasgenたちは、地域気候モデルによるシミュレーションを用いて、2017~2018年の質量減少が低レベルだった原因としてグリーンランド西部の冷夏と東部の豪雪を挙げた。
これに関連したNature Climate Change のNews & Viewsでは、Yara Mohajeraniが、「グリーンランド氷床の質量収支の変化を理解し、詳細に監視することが極めて重要である。Sasgenたちは、その方向への重要な一歩を踏み出している」と述べている。
doi:10.1038/s43247-020-0010-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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