物理学:上下逆さまの浮力
Nature
2020年9月3日
浮揚する液体の層の下部界面に微小な船が上下逆さまになって浮かび、通常と異なる浮力を示すことを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。この観測結果は、気液界面(空気と液体の界面)に関する私たちの直観的理解に反しており、今後の液体界面の挙動に関する研究を促進する可能性がある。
実験用フラスコなどの容器の中の液体は、通常、重力の作用によって容器の底にたまる。しかし、特定の状況下で、液体を鉛直方向に振動させると、液体層をそれよりも密度の低い層(例えば、空気のクッション)の上で浮揚させることができる。今回、Emmanuel Fortたちの研究チームは、この鉛直方向の振動が、浮揚する液体層の下部表面で、あたかも重力が反転したかのように浮力を反転させることを明らかにした。今回の研究では、容器に液体(シリコン油またはグリセロール)を入れて鉛直方向に振動させ、この液体の層が浮揚し始めるまで、実験系の底部に空気を注入する実験を行い、浮揚する液体層の下部界面で、模型の船などの物体が上下逆さまに浮くことを実証した。Fortたちは、鉛直方向の振動が、この見掛けの反重力効果を引き起こすと説明している。また、この液体層の下部域では、気泡が浮上するのではなく沈降することが観測された。これは、以前の実験で観察された反重力効果と関連するものである。
アルキメデスの原理によれば、液体中に沈められた物体は、この物体によって押しのけられた流体の重さに等しい上向きの浮力を受けるが、今回のFortたちの観測結果は、この原理に反している。Fortたちは、この浮力が、浮揚する液体層の下部界面で反転していることを示し、液体層の上部界面と下部界面に模型の船を浮かべてこれを実証した。Vladislav SorokinとIliya BlekhmanはNews & Viewsの中で、このことは、単なる船の珍現象にとどまらず、流体中に閉じ込められたガスや物質の輸送に応用できるかもしれないと述べている。
doi:10.1038/s41586-020-2643-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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