感染症:COVID-19重症化の遺伝的リスク因子はネアンデルタール人から受け継いだと考えられる
Nature
2020年9月30日
COVID-19の重症化リスクに関連する遺伝的バリアントはネアンデルタール人から受け継いだ可能性があることを示した論文が、Nature に掲載される。ただし、COVID-19重症化のリスク因子は、高齢者、男性など数多く存在し、この遺伝的バリアントは、その1つにすぎない。
これまでの研究で、SARS-CoV-2に感染した者が呈する呼吸不全に関連する遺伝子クラスターが3番染色体上に特定されているが、今回、Hugo ZebergとSvante Pääboは、この遺伝子クラスターの起源を明らかにするため、ネアンデルタール人とデニソワ人(初期の現生人類に遺伝的バリアントをもたらした古代ヒト族)の古ゲノムを解析した。その結果、この領域の遺伝的バリアントが、ネアンデルタール人から受け継いだハプロタイプ(ある程度の数の遺伝子を含むゲノム領域)に由来することが明らかになった。このハプロタイプは、約5万年前の南ヨーロッパのクロアチア出身のネアンデルタール人に最も近く、現在のヨーロッパの人口の約16%、南アジアの人口の50%が保有している。
このハプロタイプの出現頻度が最も高いのはバングラデシュで、人口の63%が、ネアンデルタール人のリスクハプロタイプを少なくとも1コピー保有すると推定されている。COVID-19の重症化に集団間格差があることが観察されており、その一因が、このリスクハプロタイプの出現頻度差にあると考えられている。例えば、英国内のバングラデシュ系の人々は、COVID-19による死亡リスクが一般集団よりも約2倍高いとZebergとPääboは指摘している。
doi:10.1038/s41586-020-2818-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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