天文学:冥王星の山々の頂上にあるメタンの霜はどうやってできたのか
Nature Communications
2020年10月14日
冥王星の赤道域にある山々の頂上のメタンの霜は、地球上の山々が雪に覆われる過程とは異なる独特な大気過程によって形成されることを報告する論文が、今週、Nature Communications に掲載される。
冥王星には数多くのメタン層があり、クトゥルフ領域のクレーターの縁や壁、山々の頂上で観測されたメタン層は、地球上の山脈を覆う雪に似ている。しかし、このメタンの霜(メタンを豊富に含むものと、窒素とメタンの両方を含むものがある)の正確な組成と形成機構は明らかになっていなかった。
今回、Tanguy Bertrandたちの研究チームは、NASAの探査機ニューホライズンズによって得られたデータを用いて、高分解能の数値気候シミュレーションを実施し、冥王星のメタン循環の解明を進めた。
Bertrandたちは、冥王星のクトゥルフ領域で観測された明るい霜は、大部分がメタンを豊富に含む氷でできていることを実証した。Bertrandたちは、今回のシミュレーションに基づいて、冥王星の大気循環が高所での気体メタンの濃縮を引き起こし、これが山頂でのメタンの凝結に有利に働いたことで、観測されたような霜が形成されたという考えを明らかにしている。これに対して、地球上では、湿気を含んだ風が、山の斜面を吹き上がって冷え(上昇中の空気の膨張によって、高所に行くほど大気温度が低下するため)、山頂での水分の凝結と雪の形成が引き起こされる。
Bertrandたちは、この冥王星でのメタンの霜の形成過程が、冥王星上のメタンを豊富に含む他の領域の形成の原因でもあると考えられると結論している。
doi:10.1038/s41467-020-18845-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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