健康:ワクチン接種の容認は政府への信頼感と結び付いていることが世界的調査で判明
Nature
2020年10月20日
将来、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンが開発され、安全で有効だと証明されれば、ほとんどの人は接種を受け入れると予想される。だが、ワクチンを忌避する人たちが接種を拒否するようなら、集団免疫獲得を目指す世界的な努力が立ち往生するかもしれないという調査結果が、Nature Medicine に掲載される。
2020年6月、J Lazarusたちは19か国の1万3426人を対象に、COVID-19に対するワクチンが将来できたら接種を受けるかどうかを調査した。71.5%がワクチンの安全性と有効性が証明されれば接種を受けるだろうと回答し、61.4%は雇用者が推奨するならば接種を受けると回答した。回答には地域差が顕著であり、ワクチンを受け入れる率は、ほぼ90%(中国)から55%(ロシア)と幅があった。ワクチンの受け入れ率が高い国は中央政府への信頼度が高いアジア諸国が多く(中国、韓国、シンガポール)、ブラジル、インド、南アフリカのような中所得国がわずかの差でそれに続いた。また、雇用主がワクチン接種を推奨するのではなく、強制した場合には、接種を受ける可能性が低くなることも分かった。このことは、今回のようなワクチンは、接種を要求するよりも奨励する方が、承諾を得る戦略として有効である可能性を示唆している。また、年齢が若いほど、雇用主からのワクチン推奨を受け入れやすく、男性は一般に、女性よりもワクチン接種を受け入れにくい傾向があることも分かった。
今回の研究は、COVID-19ワクチンが世界的に受け入れられる可能性を具体的に評価した初めての公的研究であり、著者たちは、地域によって受容レベルが低いことを懸念している。ワクチン忌避にはその理由を解明して対処することが必要で、そうしないと、このパンデミックの世界的な制御が遅れる危険性がある。著者たちは、関係当局は単にワクチンの安全性と有効性を宣言するだけでなく、それ以上の努力をするべきだと論じている。ワクチン受容を進める戦略は、共同体に特有の懸念や不信感の歴史的背景に注意を向ける必要があり、宗教的信念や人生観にも細やかな配慮が求められる。各国政府は明確で一貫性のある助言をすべきであり、健康についての信頼性が高く、文化的側面も考慮したコミュニケーションが、ワクチン受け入れを説得する際の重要な鍵となるだろうと著者たちは考えている。
doi:10.1038/s41591-020-1124-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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