惑星科学:着陸機フィラエがバウンドしたために得られた、彗星に関する新知見
Nature
2020年10月29日
着陸機「フィラエ」が67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星にバウンドして着陸した際の2回目の接地場所について明らかにした論文が、今週、Nature に掲載される。「スカルトップ・リッジ(skull-top ridge)」と名付けられたこの接地場所にある氷の巨礫にフィラエが残した跡を分析することにより、この着陸によって初めて露出した氷の強度に関する知見が得られた。
2014年11月12日、フィラエは67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に向けて降下した。フィラエは着陸の際に2回バウンドした後、アビドス領域の突き出した岩の下で止まった。これまでに1回目と3回目の着地点が特定されていたが、2回目の接地場所の位置は不明のままだった。
今回、Laurence O'Rourkeたちの研究チームは、新たに行われたフィラエの着陸軌道の分析に基づいて、フィラエの2回目の接地場所の特定を試みた。O'Rourkeたちは、67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を周回していた探査機ロゼッタのフィラエ着陸前後の画像を比較分析したところ、山の尾根の表面にある2つの隣接する巨礫の特徴が変化していたことを見いだした。この変化はフィラエの存在によってのみ説明できる。O'Rourkeたちは、フィラエが、この地点に約2分間滞在し、4回地表に接触したと判断した。その際に、巨礫の内部にあった水氷が露出した。3回目の接地場所では、氷の中にフィラエの接触によってできた約0.25メートルの跡が観察された。このことから、O'Rourkeたちは巨礫内部の氷の強度が非常に低い(12パスカル未満で、降ったばかりの小雪よりも柔らかい)と算出した。O'Rourkeたちは、今回の知見が、今後の彗星探査で氷の試料を採取する際に必要となる機械的手順についての手掛かりになると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-020-2834-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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