神経変性疾患:2種の血中分子からアルツハイマー病の発症を予測できるかもしれない
Nature Aging
2020年12月1日
軽度認知機能障害の患者の血液に含まれる2種類の分子[181番目のトレオニンがリン酸化されたタウ(P-タウ181)とニューロフィラメントライト(NfL)]の濃度を基に、将来の認知機能低下とアルツハイマー型認知症への進行を予測できる可能性のあることを明らかにした論文が、Nature Aging に掲載される。この知見は、リスク集団においてアルツハイマー病への進行を追跡観察するための日常的な血液検査の開発に役立つ可能性がある。
アルツハイマー病は、世界中に約5000万人の患者がおり、全認知症症例の50~70%を占めている。その特徴は、神経細胞死を引き起こすと考えられている複数種のタンパク質が脳内に蓄積することであり、最終的には認知症に至る。最近の研究では、こうしたタンパク質は血液中に存在していて、それらの血漿中濃度を調べる検査を使って、アルツハイマー病の診断や他の一般的な認知症との鑑別が可能であることが示されている。
今回、Oskar Hanssonたちの研究チームは、2つの独立した軽度認知機能障害の患者のコホート計573人のデータを用いて、認知機能低下とアルツハイマー型認知症への進行に関する個別化されたリスク予測モデルを構築し、その妥当性を検証した。Hanssonたちは、血中バイオマーカーのさまざまな組み合わせに基づいた数種類のモデルの精度を比較して、4年間にわたって認知機能低下と認知症の予測を行った。その結果、タウの一種であるP-タウ181と神経細胞の死と損傷の存在を反映するNfLタンパク質に基づいた予測モデルが最良であることが分かった。
Hanssonたちは、今回の知見によって、血中バイオマーカーの特定の組み合わせを用いてアルツハイマー病の進行を個別に予測することの有用性が実証されたと結論付けている。ただし、より大きなコホートでのさらなる研究が必要である。
doi:10.1038/s43587-020-00003-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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