法医科学:ヒトと動物の血液を迅速に鑑別する非破壊検査技術
Communications Chemistry
2020年12月11日
ヒトの血液と11種の動物の血液を鑑別するための非破壊的な方法について記述した論文が、Communications Chemistry に掲載される。この方法に基づいて、犯罪現場で発見された血痕がヒトの血液かどうかを迅速に確認し、またはヒトの血液でないことを確認するための技術を開発できる可能性がある。
血痕は、DNA証拠物件を得るための主要な手掛かりの1つだが、現在の血液検査では、通常、血液サンプルとそれに伴うDNA証拠物件が全て破棄されてしまう。その上、現在の血液検査では、偽陽性判定の可能性がある。つまり、ヒトの血液でないのにヒトの血液だとされることがあるのだ。そのため、ヒト血液と動物血液を高い信頼性で鑑別できる非破壊検査が、法医学的な目的、特にひき逃げ事件の捜査にとって非常に望ましい。ひき逃げ事件では、被疑者が動物をひいたと主張する可能性があるのだ。
今回、Igor LednevとEwelina Mistek-Morabitoは、減衰全反射フーリエ変換赤外(ATR FT-IR)分光法と統計解析を併用して、ヒトと動物の血液を鑑別した。今回の研究では、ヒト、ネコ、イヌ、ウサギ、ウマ、ウシ、ブタ、フクロネズミ(オポッサム)、アライグマの血液サンプルを用いて統計モデルが構築され、その検証が、シカ、ヘラジカ、フェレットの血液サンプルを用いて行われた。一般的な家庭用ペット、食用の動物、野生生物犯罪やひき逃げ事故に関係する可能性のある動物が、これらの動物種に選ばれた。トレーニング用データセットで使用した動物種の血液サンプルを用いてモデルを検証したところ、290件のうち、誤判別が1件で、シカ、ヘラジカ、フェレットの血液サンプルを用いた検証で誤判別はなかった。
一部のATR FT-IR分光器は持ち運び可能なため、この方法を基にして現場での分析のための技術を開発できる可能性がある。
doi:10.1038/s42004-020-00424-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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