惑星科学:月のクレーターが新たに10万個以上突き止められた
Nature Communications
2020年12月23日
月の表面において、これまで知られていなかったクレータを10万9000個以上突き止めたことを報告する論文が、今週、Nature Communications で発表される。
月の表面の大部分は、クレーターに覆われている。しかし、クレーターの数を自動検出する方法と目視によって検出する方法で得られたクレーターの総数は一致していない。例えば、不規則な形状のクレーターや劣化したクレーターを自動的に検出するのは難しい場合が多い。
今回、Chen Yangたちの研究チームは、それまでに得た知識を次の問題の解決に利用する機械学習の手法の1つである転移学習(transfer learning)を用いて、月面の衝突クレーターの特定を試みた。Yangたちは、まず過去に特定されたクレーター(7895個)と年代決定されたクレーター(1411個)のデータを用いて、ディープニューラルネットワーク(DNN)の訓練を行った。このDNNは、嫦娥(じょうが)1号と嫦娥2号のデータを用いて、新たに10万9956個のクレーターを特定した。この結果は、月の中低緯度地域のこれまでに知られたクレーターの数十倍に相当する。このDNNは、直径8キロメートル以上のクレーターのうち、1万8996個のクレーターの年代を推定した。こうした知見は、月の中低緯度地域のクレーターのデータベースを新たに作成することにつながった。
Yangたちは、今回発表した手法が、太陽系の他の天体についても適応可能であり、目視による分析方法よりも多くの情報を抽出する上で役立つ可能性があるという考えを示している。
doi:10.1038/s41467-020-20215-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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