環境:アルカンは燃焼しなくても大気質に影響を与える
Communications Chemistry
2021年2月19日
ガソリンなどの化石燃料の重要な化学成分である長鎖アルカンは、燃焼しなくても都市部の大気汚染に寄与することを報告する論文が、Communications Chemistry に掲載される。
自動車のエンジンなどにおける燃焼過程では、高温になると自動酸化と呼ばれる連鎖反応が起こる。近年、自動酸化は、大気中の高度に酸素化された化学物質の重要な供給源であることが明らかになった。こうした化学物質は、有機エアロゾルによる大気汚染を引き起こす。従来の化学的知識では、大気条件下の低温で自動酸化反応が起こるためには、炭素–炭素二重結合や酸素含有基のような適切な構造的特徴が化学物質中に存在しなければならないことが示唆されている。しかし、燃焼エンジンに使用する主要な燃料タイプであり、都市部の微量ガスの重要なクラスであるアルカンは、このような構造的特徴を持っていないため、自動酸化に対する感受性は低いと考えられていた。
今回、Zhandong Wangたちは、最近開発された高感度質量分析法を用いて、アルカンのラジカルと酸化生成物の両方を測定した。その結果、今回調査したC6–C10アルカンでは、燃焼条件下と大気条件下の両方で、以前考えられていたよりもはるかに効率的に自動酸化が起こることが分かった。NOXは通常、都市部で自動酸化反応を急速に停止させるが、C6–C10アルカンからは、高濃度のNOXの存在下であっても、高度に酸素化された生成物が大量に生じ、都市部の有機エーロゾル汚染に寄与する可能性がある。
以上の結果は、エンジンの効率と都市部の大気質の両方を改善することに直接関係している。
doi:10.1038/s42004-020-00445-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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