気候変動:北極海の海氷減少が米国西部の山火事の増加に結び付いている可能性
Nature Communications
2021年10月27日
北極における海氷の減少が米国西部における山火事活動の増加に寄与していることを示唆するモデル化研究について報告する論文が、Nature Communications に掲載される。この知見は、人為起源の気候変動が北極の極端な気象現象に及ぼす影響を示している。
米国西部の山火事は、近年、発生頻度も深刻度も高まっている。北極の海氷の減少が温帯・亜熱帯地域の極端な気象条件に影響を与え得ることを示す証拠がいくつか得られているが、山火事への影響は明らかでない。
今回、Yufei Zou、Hailong Wangたちは、過去40年間の山火事の発生件数、海氷密接度と気象条件に関するデータを統合し、これらの要因の関係を調べるためにモデルによるシミュレーションを行った。Zouたちは、7~10月の北極の海氷密接度の低下と、それに続く9~12月の米国西部での大規模な山火事の発生確率の上昇との関連性を明らかにした。このモデルによるシミュレーションでは、北極の海氷の減少が、より高温で乾燥した気象条件を引き起こす大気循環の変化に結び付いており、これが山火事の発生可能性を高めていることが示された。
Zouたちは、北極の海氷密接度が山火事に及ぼす影響は、熱帯でのエルニーニョ・南方振動と同程度の規模のものだと結論付けている。熱帯でのエルニーニョ・南方振動も同様に、地域的な山火事の状況を調節している可能性がある。Zouたちは、北極の海氷は減少し続けることが予測されているため、米国西部の山火事に対する感受性は今後さらに強まる可能性があると考えている。
doi:10.1038/s41467-021-26232-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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