COVID-19:米国でワクチン接種をためらっている人々の気持ちを変えるのは難しい
Scientific Reports
2021年11月4日
このほど実施された全国代表調査において、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2 (SARS-CoV-2)ワクチンの接種を望まない米国人の半数は、何があってもワクチン接種を受けたくない気持ちが変わることはないと回答したことを報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。
今回、Jeffrey Lazarusたちの研究チームは、2021年4月に、米国の成人6037人を対象としてSARS-CoV-2ワクチンの接種に対する態度を調査した。調査参加者の3分の2はニューヨーク、ロサンゼルス、ダラス、シカゴの住民が占め、残りの3分の1は、それ以外の米国各地の住民だった。
これらの参加者の中でSARS-CoV-2ワクチンの接種を受けたくないと回答した者は、ダラスで19.7%、ロサンゼルスで11.5%、シカゴで11.2%、ニユーヨークで10.1%であったのに対して、その他の地域は21.4%だった。ワクチン接種を受けたくないと回答した者のうちの半数は、何があってもワクチン接種に対する考えは変わらないと回答し、その過半数は、そうした考えを持っている原因がワクチンの安全性に関する懸念だと回答した。ワクチン接種を受けたくないと回答した者は、自宅以外で働いている人、保守的な政治的見解を持っている人、世帯収入が低い人、過去に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査で陽性反応が出たことがない人に多い傾向が見られた。一方、教育レベル、人種、年齢、性別は、予防接種を受けたくないということと一様に関連しているわけではなかった。参加者の82%以上は、COVID-19が健康に対する深刻な脅威であると考えていたが、18%以上はCOVID-19の危険性がワクチンの危険性を上回るとは考えておらず、15%以上はCOVID-19がワクチン接種によって予防できないと考えていた。また、参加者の50%以上が、SARS-CoV-2ワクチン接種の義務化という政府の方針に賛成し、68%以上がワクチン接種を海外旅行の要件とすることを支持した。
今回の研究で得られた知見は、ワクチン接種の義務化に対して広範な支持が得られる可能性が高いが、保守的な政治的見解を持ち、世帯収入が低い人々の間でSARS-CoV-2ワクチンの受容度を高めるためには、さらに的を絞った介入が必要なことを示唆している。
doi:10.1038/s41598-021-00794-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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