社会学:インターネット上のソーシャルメディア「レディット」での政治的分極化を後押ししたのは新規ユーザーだった
Nature
2021年12月2日
2005~2018年の14年間にレディット(Reddit)に投稿された51億件のコメントの分析から、2016年の米国大統領選挙の頃にレディットに新規登録したユーザー(主に右派のユーザー)が、同サイトでの著しい政治的分極化を引き起こしたことが明らかになった。この知見を報告する論文が、Nature に掲載される。今回の知見は、この時期に政治的分極化を促進したのがRedditの既存ユーザーだったという従来の考えに疑問を投げ掛けている。
レディットは、インターネット上で世界最大級のソーシャルプラットフォームで、ディスカッションに基づいた数千のコミュニティー(サブレディット)で構成されている。インターネット上のコミュニティーで同じ考えを持つグループの一員であることは、特に政治的見解が関係する分極化につながる場合があると示唆されている。しかし、個々のユーザーが時間の経過とともに極端なイデオロギーに向かって進むのか、中道的見解を有する集団がより極端な意見を持つユーザーに取って代わられるのかは明らかになっていない。
今回、Isaac WallerとAshton Andersonは、レディットで分極化がどのように起こったのかを調べるため、機械学習を用いて社会的スタンス(政治的傾向を含む)を評価する方法を開発し、2005~2018年の約1万のサブレディットコミュニティーにおける全てのレディットの投稿について、社会的スタンスを評価した。原則として、個々のユーザーの意見が時間の経過によって分極化することはなかったが、レディットでは、2016年の米国大統領選挙の頃、それに合わせたように政治的分極化が起こった。この大衆レベルの政治的分極化を推進した人には、政治的スペクトルの右側に位置する新規ユーザーと新たに政治に関心を持つようになったユーザーが不相応に多かった。これらの新規ユーザーは、右派の議論をさらに右方向に動かしたが、左派と中道派の議論には影響を及ぼさなかった。
著者たちによれば、このようにインターネット上のコミュニティーにおける社会的スタンスを定量化する手法は、インターネット上での行動の社会的状況を理解することやオンラインプラットフォームの設計に影響を与える可能性があるとされる。今回の知見は、分極化の進展などの観察結果が、社会レベルでの政治理念の変化ではなく、特定の集団の動態の変化に起因する可能性のあることを示唆している。
doi:10.1038/s41586-021-04167-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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