がん治療:プロバイオティクスが腎細胞がんの免疫療法の効果を増強する可能性
Nature Medicine
2022年3月1日
生菌製剤CBM588(プロバイオティクスの1つ)を免疫療法と組み合わせると、転移性腎細胞がんの患者の抗腫瘍応答が強化される可能性があるという第1相臨床試験の結果が報告された。この知見は、腸内細菌を変化させてがん患者の免疫療法の効果を高められる可能性があることを示している。
腸内に生息する微生物集団(微生物相)は免疫系の調節に関わっており、特定の組成のマイクロバイオームはがん患者で免疫療法の効果を変化させることが知られている。また、腸内の細菌株の不均衡は炎症性腸疾患などの病気に関連しており、特定の細菌が発がん性毒素を産生することによって、がんリスクの上昇や抗がん治療に対する抵抗性に関わってくることもある。
今回、S Pal、S Highlanderたちは、29人の転移性腎細胞がん患者からなるコホート(平均年齢66歳、72%が男性)で、第1相臨床試験を行った。患者たちは、免疫チェックポイント阻害剤(免疫療法の一種)の標準的な組み合わせの投与に加えて、ビフィズス菌群などを含むマイクロバイオームを補助することが期待される生菌製剤CBM588を経口投与する群としない群に無作為に分けられた。ビフィズス菌群は、免疫チェックポイント阻害剤に対する応答の改善に関連していることがすでに報告されている。CBM588の投与を受けた患者では免疫チェックポイント阻害剤療法に対する応答が改善されて長く続き、しかも毒性の面では対照群に比べて差がないことが分かった。これらの患者から採取された糞便試料の解析により、臨床応答が改善された患者ではビフィズス菌群の数が増えていることが確認され、これが無増悪生存期間の延長と免疫の活性化に結び付くことが確かめられた。
著者たちは、これらのデータは、CBM588が現在免疫療法を受けているがん患者の予後を改善する可能性があることを裏付けていると述べている。しかし、これらの結果はもっと長い時間をかけて、またがんの種類を増やして検証する必要があるだろう。
doi:10.1038/s41591-022-01694-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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