気候変動:ハワイのサンゴ種の一部には海洋温暖化の影響からのレジリエンスが備わっている
Scientific Reports
2022年3月11日
ハワイに生息する3種類のサンゴの研究から、一部のサンゴ種が、気候変動を原因とする海洋の温暖化や酸性化の影響からのレジリエンスを有していることが判明したと報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。今回の知見は、一部のサンゴが海洋条件の変化に対処し、生き延びる能力を有している可能性を解明する手掛かりになっている。
地球上のサンゴ礁は、気候変動を原因とする海洋の温暖化や酸性化による脅威にさらされている。海洋の温暖化や酸性化のために、サンゴの健康に著しいストレスがかかり、サンゴの大量白化現象が起こることがある。
今回、Rowan McLachlanたちは、2015年8月29日~11月11日にハワイの4か所のサンゴ礁地帯に生息するMontipora capitata(枝状で皮殻状の「イシサンゴ」)、Porites compressa(枝状サンゴ種の「フィンガー・コーラル」)、Porites lobata(塊状サンゴ種の「ローブ・コーラル」)の合計3種のサンゴから、66点の試料を採取した。これらの試料は、(1)現在の海洋条件に設定された対照タンク、(2)海洋酸性化シナリオ(−0.2 pH単位)に従ったタンク、(3)海洋温暖化シナリオ(+2℃)に従ったタンク、(4)海洋酸性化シナリオと海洋温暖化シナリオの組み合わせに従ったタンクの4つの異なる条件に設定された海水タンクにそれぞれ静置された。サンゴ試料は、それぞれの条件下で22か月にわたって保持された。
McLachlanたちは、サンゴの生存が水温に影響されることを明らかにした。対照タンクのサンゴ試料の生存率が92%であったのに対して、温暖化タンクのサンゴ試料の生存率は61%にとどまっていた。また、3種の気候変動条件のいずれの場合でもM. capitataの生存率がP. compressaより低かった(67%対83%)。またP. compressaのレジリエンスは、温暖化と酸性化を組み合わせた条件下において、M. capitataとP. lobataを上回っていた(71%対46%対56%)。McLachlanたちは、複合的な気候変動条件下では、対照条件下と比べて、多くのM. capitata個体が、生き延びるために十分なエネルギーを獲得できなかったという見方を示している。これによって、M. capitataの死滅率がP. compressaより高かったことを説明できるかもしれない。将来の海洋条件下に置かれたP. compressaは、十分量以上のエネルギーを獲得することができた。対照条件下と将来の海洋条件下で生き延びることのできたP. lobataに生理学的差異はほとんどなかった。
McLachlanたちは、Porites種のサンゴが温暖化と酸性化からのレジリエンスを有し、サンゴ礁の形成において役割を担っていることから、海洋条件が変化してもサンゴ礁生態系の一部が維持される可能性があるという希望が生まれていると考えている。
doi:10.1038/s41598-022-06896-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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