気候変動:さらなる温暖化を防ぐには温室効果ガス排出を直ちに削減することが必要だ
Nature Climate Change
2022年6月7日
このほど実施されたモデル化研究で、たとえ温室効果ガスの排出を直ちに停止したとしても、地球の気温が産業化以前の水準から少なくとも1.5℃上昇することが不可避となる確率は42%、2029年までに温室効果ガス排出量が削減されなければこの確率が66%に上昇することが明らかになった。この知見は、地球温暖化が1.5℃や2℃のレベルに達することが不可避とならないように直ちに行動を起こす必要があることを強調している。
温室効果ガスの排出が停止されてから温室効果ガスの影響が持続する期間は、大気中の温室効果ガスの寿命によって決まる。従って、パリ協定に定める目標に合わせて地球温暖化を抑制できる確率を算出するには、過去の温室効果ガス排出によって今後発生すると考えられる温暖化について理解しておくことが必要だ。
今回、Michele Dvorakたちは、温室効果ガス排出量に基づいた気候モデルを用いて、2021〜2080年の排出量抑制経路(IPCCのAR6報告書で使用されている共通社会経済経路(SSP))の現行の経路とそれ以外の経路の下での不可避的温暖化(過去に排出された温室効果ガスの波及効果)を調べた。Dvorakたちは、温室効果ガスの排出が直ちに停止されれば、1.5℃を超える地球温暖化が不可避となる確率が42%だが、地球温暖化が2℃を超える確率がわずか2%になることを明らかにしている。一方、温室効果ガス排出量の削減を2029年まで先延ばしした場合には、SSP2-4.5シナリオ(炭素排出量が21世紀半ばまで高い水準を保ってから減少し始める)の下では、1.5℃の温暖化が不可避となる確率が66%に上昇することも明らかになった。この66%という確率は、全ての排出シナリオの下での2027年から2032年までの予測に示された。SSP2-4.5シナリオの下では、地球の温暖化が1.5℃や2℃のレベルに達する4~6年前にこうした温暖化が不可避となると予測されている。
今回の研究は、将来的な温暖化のさらなる進行とそれに関連した気候システムの変化を避けるため、緊急の緩和策を実施する必要があることをはっきりと示している。
doi:10.1038/s41558-022-01372-y
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