遺伝学:ヒトの身長の遺伝的背景に関する新知見
Nature
2022年10月13日
ヒトの身長に関連する1万2000個以上の遺伝的バリアントが特定されたことを報告する論文が、Nature に今週掲載される。この知見は、これまでに報告されている中で最大規模のゲノムワイド関連解析(GWAS)である約540万人のゲノムワイド遺伝子型解析のデータによって得られた。
成人の身長は、遺伝性の形質であり、容易に測定できる。以前の研究で、主にヨーロッパ系の集団において、身長に関連する高頻度の遺伝的バリアント(骨格障害に関連する遺伝子を含む)が数多く同定された。身長は、観察可能なヒトの形質(表現型)の構造における遺伝的変異の役割を評価するためのモデル形質になっている。
今回、GIANTコンソーシアムのLoïc Yengoたちは、さまざまな人種の集団(約540万人)の遺伝的解析を行った。このサンプルの75.8%は、主な祖先がヨーロッパ系で、8.8%が東アジア系、8.5%がヒスパニック系、5.5%がアフリカ系、1.4%が南アジア系であった。そして、身長と有意に関連する1万2111個の遺伝的バリアントが同定された。Yengoたちは、これらのバリアントが、特にヨーロッパ系の集団において、身長に関連する高頻度バリアントのほぼ全てを網羅しているという見解を示している。次に、ゲノム全体において、これらのバリアントの位置を調べたところ、成長障害に関連することがすでに知られている遺伝子の付近に集合している可能性の高いことが判明した。Yengoたちは、今回の研究で同定された身長に関連する遺伝的バリアントは、ヨーロッパ系の集団における身長の個人差の40%を説明できるが、他の集団では10~20%程度にとどまることを指摘している。
今回の知見は、十分に大きなサンプルサイズを確保できれば、個人差に寄与するゲノム領域の飽和マップを作製できることを示している。今回の研究で、ヨーロッパ系の集団における身長に関連するゲノム領域の飽和マップが得られたが、Yengoたちは、非ヨーロッパ系の集団についても同じレベルの飽和を達成するにはさらなる研究が必要になると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-022-05275-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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