物理学:空中レーザーで雷撃をそらす
Nature Photonics
2023年1月17日
空に向けて照射した強力なレーザーが仮想的な避雷針を形成し、落雷経路をそらす可能性があることを実証した論文がNature Photonicsに掲載される。今回の知見は、発電所、空港、発射台などの重要インフラを保護するよりよい避雷方法への道を開く可能性がある。
これまでで最も一般的な避雷装置は、雷放電を捕まえて安全に地面に誘導する導電性金属の棒、すなわち避雷針(フランクリンロッド)である。空中に向けられたレーザービームは、仮想的な可動式の棒として機能することによって、避雷針の代わりになる可能性がある。高強度レーザーパルスを用いて雷を誘導するという考えは、これまでに、研究室条件で検討されたことがある。しかし、レーザーによる誘雷を実証した野外実験結果は、これまで存在していない。
Aurélien Houardたちは、2021年の夏、スイス北東部のゼンティス山で実験を行い、レーザーで雷を誘導できるかどうかを調べた。最高で1000パルス毎秒で発射する大型車サイズのレーザー装置が、1年に100回ほど落雷を受ける電波塔の近くに設置された。雷雨活動時6時間を超える実験で、著者たちは、レーザーが4回の上向き雷放電の経路を変えることを観測した。観測結果は、雷で発生した高周波電磁場を用いて雷撃の位置を決定することによって裏付けられた。雷撃時のX線バーストの検出の増加によっても誘雷の成功が確認された。雷撃事象の1つは、ハイスピードカメラによって直接記録され、50メートル以上レーザー経路に追従することが示された。
著者たちは、今回の知見が、大気におけるレーザー物理に関する現在の理解を広げるとともに新しい避雷戦略の開発に役立つ可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s41566-022-01139-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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