健康:マウスの実験で有望な結果が得られた男性用避妊薬の候補化合物
Nature Communications
2023年2月15日
新たに開発された薬剤候補化合物が雄マウスの生殖能力を迅速かつ一時的に低下させることが実証された。この知見は、男性用経口避妊薬の開発に向けた取り組みにおける前進とされる。今回の研究について報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。
男性の避妊手段は、現在のところ、コンドームと精管切除に限られている。新たな男性用の避妊手段を開発するために複数の取り組みが行われてきているが、有効性の低さ、長期間の事前投与、望ましくない副作用などの課題によって成功が阻まれている。
Jochen BuckとLonny Levinたちは、可溶性アデニル酸シクラーゼ(sAC)阻害剤の改良版を開発し、必要に応じて服用する男性用避妊剤となる化合物として有望なことをマウスの実験で明らかにした。このsAC阻害剤によってマウスとヒトの精子の運動性(精子機能の重要な指標)が低下することが分かったのだ。今回の研究では、一連の概念実証実験が行われ、sAC阻害剤の避妊作用が裏付けられた。雄マウスにsAC阻害剤を投与したところ、数時間後に生殖能力が失われたが、交尾行動は通常通りだった。避妊効果は、投与後2時間までが100%、投与後3時間までが91%だった。そして投与後24時間で、生殖能力が正常なレベルに戻った。また、6週間連続投与しても健康への悪影響は認められなかった。大部分の実験ではsAC阻害剤が注射によって投与されたが、経口投与による実験も行われ、マウスの精子の運動性は同様のレベルに低下した。さらなる研究によってsAC阻害剤がヒトに対して有効に作用するかどうかを判断し、起こり得る副作用を見つけ出す必要があると論文著者は指摘している。
doi:10.1038/s41467-023-36119-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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