農業:西アフリカ2カ国でカカオ栽培が森林破壊を引き起こしている
Nature Food
2023年5月23日
コートジボワールとガーナにおけるカカオ栽培の高分解能地図が作製され、カカオ栽培の規模がこれまでの公式の情報源による報告よりもかなり大きく、この地域の森林破壊に関連している可能性のあることが示唆された。このことを報告する論文が、Nature Foodに掲載される。
コートジボワールとガーナは、世界最大のカカオ生産国であり、総生産量の3分の2を占めている。両国のカカオ栽培地の規模と正確な場所は、経済的、社会的、環境的に重要であるにもかかわらず、把握されていない。1950年以降、コートジボワールでは、森林被覆面積の90%以上が失われたと推定されており、ガーナでも65%以上が失われた可能性がある。正確な地図がないため、保護区域内のカカオ栽培地の拡大とカカオ生産量の正確な定量化が進んでおらず、持続可能な土地ガバナンスを改善し得る情報が得られずにいる。
今回、Nikolai Kalischekらは、コートジボワールとガーナにおけるカカオ栽培地の規模を調査するため、両国にある10万以上のカカオ農園のデータセットと一般公開されている衛星画像を合わせて、ニューラルネットワークの訓練を行った。そして、このニューラルネットワークを基にして、カカオ栽培地の高分解能地図が作製され、現地調査によって検証された。Kalischekらは、これらの地図に基づいて、カカオ栽培がコートジボワールとガーナの保護区域内での森林減少のそれぞれ37%以上と13%以上に関連している可能性があるという見方を示している。これは、公式データがカカオの総作付面積を過小評価していることを示しており、ガーナではカカオ栽培面積が公式統計よりも約40%大きかったことを示唆している。
Kalischekらは、今回の高分解能地図が、この地域におけるカカオ栽培をこれまでより詳しく理解するための一助となり、保全と経済発展に重要な意味を持つ可能性があると考えている。
シュプリンガー・ネイチャーは、国連の持続可能な開発目標と、学術論文誌や書籍に掲載されている関連情報や証拠の認知度を高めることに尽力しています。このプレスリリースに記載されている研究は、SDG 15(陸の豊かさを守ろう、Life On Land)に関係しています。詳細については、こちらを参照してください。(https://press.springernature.com/sdgs/24645444)
doi:10.1038/s43016-023-00751-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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