大麻使用障害:大麻嗜癖の新しい治療薬候補
Nature Medicine
2023年6月9日
大麻嗜癖の新しい治療薬候補が報告された。この知見は動物モデルでのデータと第1相および第2a相臨床試験のデータに基づくもので、新たに開発されたカンナビノイド受容体(CB1)阻害剤が、離脱症状を引き起こすことなく大麻の影響を軽減させることが明らかになった。
大麻は世界で最も広く使用されている違法薬物であり、大麻使用経験者の19.5%が大麻使用障害(CUD)を発症する。CUDの特徴は、仕事に出られない、自分の責任を果たすことができないといった障害が持続し、問題があるのに大麻使用が続き、使用を止められないことである。CUDは公衆衛生上の大きな問題であるにもかかわらず、現在のところは治療法がない。
これまでの研究で、大麻の主要な精神活性成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)によるCB1受容体の活性化が、大麻が行動に及ぼす作用の原因であることが明らかになっている。P V Piazzaらは、CB1受容体によって活性化される一群の分子経路を阻害することを狙った新薬AEF0117を開発した。マウスと非ヒト霊長類で行われた前臨床概念実証研究のデータでは、この薬はTHCの行動への影響を阻害するが、正常な行動や生理作用は阻害しないことが示されている。またPiazzaらは、健康なボランティア被験者64人で行われた2つの第1相臨床試験では、この薬が安全で忍容性が高いことが明らかになったと報告している。さらに、29人のCUD患者による第2a相クロスオーバー試験が行われ、被験者はAEF0117の5日間連続投与(2通りの投与量のどちらか一方)とプラセボの5日間連続投与を無作為に決められた順序で受けた。その結果、AEF0117はプラセボと比較すると、5日間の投与期間を通して大麻の主観的に好ましい影響のスコアを下げ、大麻の自己投与を減らし、しかも離脱症状を引き起こしたり、正常な機能(気分、睡眠、食物摂取など)を損なったりしないことが示された。
これらの知見は、AEF0117がCUDの治療に使用できる可能性があり、重大な副作用は見られないことを示している。Piazzaらは、AEF0117の長期的な安全性や効果を調べるにはさらに大きなコホートでの臨床試験が必要であり、CUDの治療法を求める患者での3カ月間の研究が現在進行中だと述べている。
doi:10.1038/s41591-023-02381-w
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