気候:湖面蒸発の加速によって地球の湖の温暖化が鈍化した
Nature Water
2023年10月24日
世界の9万2000カ所以上の湖を分析した結果、湖面水温が上昇するペースが、気温の上昇ペースよりも遅いことが分かった。このことを報告する論文が、Nature Waterに掲載される。
湖の温暖化は、湖沼プロセス(例えば、結氷期間、湖水の成層化増進、湖水の低酸素化、藻類ブルームの発生)を理解する上で非常に重要だ。しかし、湖の温暖化の程度に関しては、特に北極などの地域に関する知識や夏以外の季節に関する全球的な知識が限られている。その理由としては、包括的なデータセットのないことが挙げられる。
今回、Lian Fengらは、約300万点のリモートセンシング画像と数値モデルを使って、全球的な湖面水温に関する詳細な高分解能データセットを構築した。このデータセットは世界の9万2245カ所の湖を網羅しており、1981~2020年の過去の期間と、2021~2099年までの将来期間に関するデータが含まれている。Fengらは、1981~2020年に世界の湖の湖面水温が平均で10年間に0.24℃のペースで上昇したと指摘し、長波放射、比湿、日射などの要因が、湖の温暖化に50%以上寄与したという見解を示している。また、この湖面水温の上昇率は、同時期の気温上昇率の平均値(10年間に0.29℃の上昇)より低かった。この違いは、主に湖面蒸発による潜熱損失の増加による緩和効果に起因していた。しかし、結氷面積の減少が湖の温暖化を増幅させる高緯度地域では、蒸発による潜熱損失の緩和効果が弱まり、結果として湖面水温の上昇率が同等程度、あるいは気温の上昇率を上回る可能性があるとFengらは強調している。
Fengらは、今回の知見は、低温室効果ガス排出シナリオに従わない限り、湖の温暖化は2021年から2099年まで続く可能性が高いことを示していると結論付けている。
doi:10.1038/s44221-023-00148-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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