微生物学:チェダーチーズの味が微生物によって形作られる仕組み
Nature Communications
2023年12月22日
チェダーチーズの味、例えば、フルーティーな風味、クリーミーな風味、バター風味、ナッツ風味などを形作る微生物の組み合わせを調べた研究について報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。
チーズの発酵と風味の生成は、微生物の活動による複雑な生化学反応に影響されている。チーズ中のマイクロバイオームの組成と動態は比較的よく理解されているが、風味の生成における微生物相互作用の機構的役割は十分に解明されていない。
今回、Chrats Melkonian、Ahmad Zeidanらは、チーズの風味のプロファイルが微生物相互作用によってどのように形作られているかを調べるため、サーモフィルス菌(Streptococcus thermophilus)とラクトコッカス属(Lactococcus)系統のさまざまな組み合わせによって構成された数種類のスターター培養物を用いて、1年熟成のチェダーチーズを作製した。そして、ラクトコッカス属の増殖を促進し、チーズの風味のプロファイルを形作る上で、サーモフィルス菌が重要な役割を担っていることを明らかにした。一方、クレモリス菌(Lactococcus cremoris)はジアセチルとアセトインの生成を抑制した。ジアセチルとアセトインはバターのような風味を持つが、過剰な場合はオフフレーバー(チーズ本来のおいしさを損なう不快な香りや味)を引き起こす。また、クレモリス菌を除去した場合には、4種類の風味化合物が検出され、2,3-ペンタンジオン(ナッツ、クリーム、バターの風味を生成する)、ヘプタナールとヘキサナール(フルーティーで脂っぽい味がする)などが含まれていた。一方、L. cremorisの存在下では、酢酸エチルやヘキサン酸エチル(フルーティーな風味を加える)などのエステル類や、2-メチル-3-チオラノン(肉のような風味を加える)といった別の種類の風味化合物が高濃度で検出されたと指摘されている。
著者らは、今回の知見によって、チェダーチーズの風味を形作る上で微生物の競争的相互作用と協同的相互作用が重要な役割を果たしていることが明確に示されたと述べている。
doi:10.1038/s41467-023-41059-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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