バイオテクノロジー:乳ベースのゲルによってマウスのアルコールレベルが低下
Nature Nanotechnology
2024年5月14日
乳タンパク質ベースのヒドロゲルをマウスに経口投与すると、急性アルコール中毒の効果的な解毒剤として作用する可能性があることを明らかにした論文が、Nature Nanotechnologyに掲載される。
アルコールの消費は一般的だが、毎年数百万人の死者につながる可能性があり、2016年にはアルコールが原因で300万人が亡くなっている。アルコール中毒を緩和する治療法は現在も存在するが、通常は静脈内投与し、悪心や頭痛といった症状を一時的に緩和するだけのものが一般的だ。アセトアルデヒドの蓄積につながる治療法もあり、体内の臓器に損傷を与える可能性がある。従って、短期的にも長期的にも、アルコール中毒の有害な影響を最小限にする臨床戦略が早急に必要である。
今回、Jiaqi Su、Raffaele Mezzengaらは、可能性のある解決策として経口解毒剤ゲルを開発し、マウスで試験した。このゲルは、チーズ製造時に生成される食品グレードの副産物である乳清に豊富に含まれるタンパク質βラクトグロブリンを用いて作られた。著者らは、アルコール酸化を触媒するために、ナノメートルスケールの単一部位鉄固定型βラクトグロブリン繊維を作製し、体内のアルコール分解に関与する天然酵素であるセイヨウワサビのペロオキシダーゼの配位構造を模倣した。著者らは、作製したヒドロゲルをマウスで検証し、このゲルが、有毒なアセトアルデヒドのさらなる蓄積を避けながら、安定なままで、消化環境に耐え、マウスの血中アルコール濃度を大幅に低下させることを見いだした。
こうした研究は実験室環境においてマウスで実施されたものだが、著者らは、このアルコール解毒能が臨床に移行される可能性があることを示している。しかし、さらなる研究が必要であることも指摘している。
doi:10.1038/s41565-024-01657-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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