技術:伸縮性ディスプレイの品質とロバスト性の向上
Nature Communications
2024年6月5日
従来のものよりも性能が向上したフレキシブルな伸縮性有機発光デバイスの構築について報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。今回の研究は、従来の伸縮性ディスプレイを引き伸ばしたときに解像度が低下するという問題に取り組んだもので、次世代技術であるコンフォーマブル(適合性)技術の開発に役立つかもしれない。
伸縮性ディスプレイには、ウエアラブル技術、健康モニタリングデバイス、先進的な車載ディスプレイなど、多くの潜在的な用途がある。従来の伸縮性デバイスの設計には、インターコネクターを使って接続された剛性「アイランド」のアレイ(リジッド・アイランド・アレイ)が用いられてきた。このディスプレイを引き伸ばすと、総合解像度と画素密度の低下および作業領域の減少を生じるため、ウエアラブルディスプレイへの応用や生物医学的応用における制約になっている。伸縮性ディスプレイがゆがんだときに効率と解像度を維持するための解決策は見つかっていない。
今回、Seunghyup Yooらは、新しい3Dリジッド・アイランド・アレイを設計し、発光領域の一部が隣接するアイランドの間で内側に折りたたまれ、引き伸ばされると表面に現れるようにした。Yooらは、デバイスの構造と寸法の機械的シミュレーションを行うことで、部品にかかるゆがみを最低限に抑えることができた。そして、この方法によって、このディスプレイのフィルファクター(曲線因子:性能の尺度)が、初期の引き伸ばされない状態で100%に近い高いレベルになった。この性能はゆがみがかかっても維持され、30%の歪みで性能が10%しか低下しなかった。これに対して、同じゆがみがかかった従来のリジッド・アイランド・アレイは、性能が60%低下する可能性があった。Yooらはまた、この伸縮性ディスプレイの設計が曲面ディスプレイ(例えば、球体、円柱、動的な関節運動に対応するウエアラブルアプリケーションを装着する人体部位)の上でも汎用性を有していることを実証した。
Yooらの戦略は、現在の伸縮性ディスプレイ技術の耐久性と解像度低下の両方に対処できる可能性がある。Yooらは、この方法が自由形状曲面に適合する高性能ディスプレイや照明ソリューションの開発に使用できるかもしないという見方を示している。
doi:10.1038/s41467-024-48396-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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