地球科学:深海の採掘対象が「暗黒酸素」を生み出す
Nature Geoscience
2024年7月23日
暗い深海の底にある希土類金属を含むノジュール(団塊)は、「暗黒酸素」と呼ばれる酸素を作り出すことができると報告する論文が、Nature Geoscienceに掲載される。この発見は、これらの団塊が深海底の生態系に影響を与える可能性を示唆している。
ポリメタル・ノジュール(多金属団塊)は、世界中の海にある堆積物に覆われた深海平原によく見られる。これらは、主に鉄とマンガンの酸化物から構成されているが、コバルトや希土類元素のような金属も含んでおり、多くの先進的な低炭素エネルギー技術に不可欠な成分である。そのため、深海採掘の対象となっているが、採掘による潜在的な環境への影響は十分に理解されていない。
Andrew Sweetmanらは、水深約4,200メートルの海底に設置したチャンバーを使って実験を行い、多金属団塊が発見されている中部太平洋のクラリオン・クリッパートン地帯にわたって、4,000キロ以上離れた複数の場所で酸素濃度を測定した。これらの実験のほとんどすべてで、酸素濃度が2日間にわたって着実に上昇していることが示された。著者らは、実験室での追跡分析を行い、検出された酸素の発生源は多金属団塊であると提唱している。数値シミュレーションに基づき、Sweetmanらは、酸素発生の原因は団塊の電気的特性であるという仮説を立てている。
著者らは、多金属団塊がどれだけの酸素を発生させるかをより広い規模で見積もることは難しいとしながらも、この酸素源が深海底の生態系を支えている可能性があり、もしこれらの団塊が採掘された場合、影響を受けるかもしれないことを示唆している。
Sweetman, A.K., Smith, A.J., de Jonge, D.S.W. et al. Evidence of dark oxygen production at the abyssal seafloor. Nat. Geosci. (2024).
doi:10.1038/s41561-024-01480-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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