化学:廃水を浄化しながらアンモニアを作る
Nature Catalysis
2024年8月13日
硝酸塩を含む廃水をアンモニアと浄化された水に変換する電気化学的方法を報告する論文が、Nature Catalysis に掲載される。
アンモニアは世界で最も生産されている化学物質のひとつであり、肥料などの物質として年間1億8000万トンの世界的な需要がある。アンモニアの生産は、毎年世界のCO2(二酸化炭素)排出量の1.4%を占めており、製造過程において高温高圧の環境や原料として水素の広範な利用が必要であるため、世界のエネルギー消費の2%を年間で消費する。一方、農業や工業プロセスにより、流出した硝酸塩が水供給を汚染することがある。
既存の電気化学装置では、高濃度の支持電解質(塩)と混合されたアンモニア溶液を生成し、それを分離してアンモニア生成物を得る。Haotian Wangらは、廃水をアンモニアと浄化された水に変換できる3室電気化学装置を設計した。廃水は装置内に供給され、多孔質固体電解質層上を通過して、硝酸水溶液を水とアンモニアガスに変換する。この過程で、汚染物質である硝酸塩は水から除去され、さらに精製工程を必要とせずにアンモニアガスが生成される。このプロセスは効率的で、工業廃水に見られる典型的な硝酸塩濃度(2,000 ppm)においては、追加の支持電解質を必要とすることなく、浄化された水とアンモニアガスを生成することができる。
著者らは、この装置によって、より環境に優しいアンモニア製造方法が可能になると同時に、廃水処理にも貢献できると結論づけている。また、これらの実験は実験室をベースに行われたものであり、実際の環境におけるこの装置の適用性を評価するためには、今後の研究が必要であるとしている。
Chen, FY., Elgazzar, A., Pecaut, S. et al. Electrochemical nitrate reduction to ammonia with cation shuttling in a solid electrolyte reactor. Nat Catal (2024).
doi:10.1038/s41929-024-01200-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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