環境:2023年のカナダの山火事による過剰な炭素排出
Nature
2024年8月29日
2023年のカナダの山火事による炭素排出量は、2022年の排出量上位10カ国のうち、7カ国の年間化石燃料排出量を上回ったことを報告する論文が、Natureに掲載される。その期間に化石燃料由来の炭素をより多く排出したのは、中国、インド、および米国のみであった。この調査結果は、森林が長期的なカーボンシンク(炭素吸収源)としての能力に対する懸念をさらに高めるものである。
2023年にカナダ全土で発生した山火事により、森林1500万ヘクタール以上が焼失した。これは、同国の森林面積の約4%に相当する。焼失面積の合計は、過去40年間の平均の7倍であった。カナダの森林は炭素吸収源であり、大気中から吸収する炭素の量は、放出する量よりも多い。こうした森林火災が長期的な炭素吸収源にどのような影響を与えるかは依然として不明である。
Brendan Byrneらは、2023年5月から9月にかけて発生した火災により放出された炭素の量を、煙の噴煙中の一酸化炭素の衛星観測データを用いて定量化した。著者らは、これらの火災により647テラグラム(1テラグラムは1兆グラム)の炭素が放出されたと推定しており、これはカナダの典型的な森林火災の排出量(過去10年間の平均推定値は29-121テラグラム)を上回る量である。著者らは、高温で乾燥した天候が火災の主な要因であったと指摘し、2023年が1980年以降で最も気温が高く乾燥した年であったと述べている。2023年にカナダで観測された気温は、過去の記録と比較しても極端なものであったが、Byrneらは、中間の排出シナリオ(SSP2-4.5。SSP = Shared Socio-Economic Pathway〔共通社会経済経路〕)においても、2050年代にはこのような気温が典型的なものになると予測している。このような状況は火災の増加を招く可能性が高く、森林による炭素吸収を抑制し、炭素吸収源としての役割が疑問視されかねない。
著者らは、気候緩和目標を達成するには、森林による炭素吸収量の減少を補うために許容される人為的排出量を調整する必要があり、カナダのカーボンバジェット(炭素予算)に影響を与える可能性があると指摘している。
Byrne, B., Liu, J., Bowman, K.W. et al. Carbon emissions from the 2023 Canadian wildfires. Nature (2024). https://doi.org/10.1038/s41586-024-07878-z
doi:10.1038/s41586-024-07878-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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