医学:グルコース感受性インスリンが低血糖リスクを軽減する
Nature
2024年10月17日
血糖値の急激な低下を防ぐことができる改良型インスリンが、実験室での実験と動物モデルで実証されたことを報告する論文が、Natureに掲載される。これにより、糖尿病患者のインスリンの補充がより柔軟になり、血糖値の急激な低下を抑えられる可能性がある。
糖尿病患者の中には、血糖値をコントロールするためにインスリンを補う注射が必要な人もいる。血糖値の変動は予測しにくいため、適切なインスリン投与量を選択するのは難しい。わずかな高用量でも低血糖(血糖値が下がりすぎること)につながり、生命を脅かす可能性がある。
Rita Slaabyらは、血液中のグルコース濃度(血糖値)に応じて活性が変化する改良型インスリンを開発した。NNC2215と名づけられたこの分子は、グルコースに反応して開閉するスイッチを備えている。グルコース濃度が高くなるとスイッチが開き、インスリンはより活性化して血液からグルコースを除去する。グルコース濃度が低下すると、スイッチは閉じた状態に移行し、グルコースの取り込みを妨げる。
実験室での実験によると、グルコース濃度が3–20mM(糖尿病患者が経験するおよその変動範囲)に上昇すると、NNC2215のインスリン受容体親和性は3.2倍に増加し、血糖値の変化に反応する可能性が検証された。ラットおよびブタの糖尿病モデルにおいて、NNC2215はヒトインスリンと同様に血糖値を下げる効果があることが証明された。そのグルコース感受性の向上は、これらの動物被験者において低血糖に対する防御効果をもたらすことが示された。
この改良型インスリンは、糖尿病患者、特に睡眠中に深刻な影響を及ぼす可能性のあるグルコースの急激な低下を防ぐことが期待される。このことは、糖尿病に伴う長期および短期の合併症を改善する可能性がある、と著者らは指摘している。
Hoeg-Jensen, T., Kruse, T., Brand, C.L. et al. Glucose-sensitive insulin with attenuation of hypoglycaemia. Nature (2024). https://doi.org/10.1038/s41586-024-08042-3
doi:10.1038/s41586-024-08042-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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