メンタルヘルス:デジタルアバターが幻声が聞こえる人のウェルビーイングを改善するかもしれない
Nature Medicine
2024年10月29日
AVATAR(アバター)療法として知られる新規の介入は、苦痛な声(幻声)が聞こえる精神病患者が、聞いた声のデジタル具現化と関わることを可能にし、声に関連した苦痛の短期的な改善につながる可能性がある。この研究結果は、345人の参加者を対象とした無作為化比較試験に基づくもので、Nature Medicineに掲載される。
苦痛な声が聞こえることは、人の生活の質を損なう精神病の症状であるが、薬物療法や認知行動療法などの従来の治療法は必ずしも有効ではない。
Philippa Garetらは、苦痛な声が聞こえる英国の成人の精神病患者を対象に、通常の治療と並行して行われる2種類のAVATAR療法の有効性を検証した。AVATAR療法を受ける参加者は、自己主張と自尊心を高めるためにアバターと対峙する短いバージョン(AVATAR-Brief)と、参加者の生活史に基づいてより個人化された一連の対話を行う拡張バージョン(AVATAR-Extended)のいずれかに割り当てられた。特注のソフトウェアにより、参加者はアバターの見た目や声をカスタマイズすることができた。
著者らは、AVATAR-Extended療法を受けた患者は、通常の治療のみを受けた患者と比較して、16週後には声に関連する苦痛および声の重症度レベルが臨床的に有意に改善し(ただし、28週後ではしない)、16週後および28週後の両方で声の頻度が減少したことを報告した。AVATAR-Brief療法は、苦痛および声の重症度レベルの改善にも関連していたが、これらは事前に規定した臨床的有意水準をわずかに下回るものであった。AVATAR-Brief療法を受けた患者は、AVATAR-Extended療法を受けた患者(58%)よりも高い完遂率(82%)を示した。AVATARの両療法は、16週後の気分と不安の改善、ウェルビーイングと回復の持続的な改善と関連していた。全体として、AVATAR-Extendedの方がより幅広いプラスの効果を示し、それらはより強く、より長く持続する傾向があった。
この知見は、AVATAR療法を標準的治療と併用することで、苦痛な声が聞こえる精神病患者の声に関連する症状の改善につながる可能性を示唆している。
Garety, P.A., Edwards, C.J., Jafari, H. et al. Digital AVATAR therapy for distressing voices in psychosis: the phase 2/3 AVATAR2 trial. Nat Med (2024). https://doi.org/10.1038/s41591-024-03252-8
doi:10.1038/s41591-024-03252-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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