人工知能:生成AIは2030年までに約1,000倍の電子廃棄物を生み出すかもしれない
Nature Computational Science
2024年10月29日
生成AI(Artificial Intelligence:人工知能)の人気の高まりにより、電子機器廃棄物(e-waste)が急速に増加すると予測するモデリング研究を報告する論文が、Nature Computational Scienceに掲載される。廃棄物削減策が実施されない場合、電子廃棄物は2020年から2030年の間に120万トンから500万トンに達する可能性があると著者らは指摘している。
生成AIは、多くの研究用途や、テキストや画像の生成といった日常的なタスクに有用である一方、ハードウェアのインフラやチップ技術の急速な向上に依存している。近年、生成AIの導入が増加しているため、e-waste(旧式の電子機器の廃棄物の流れ)が増加し、環境に悪影響を及ぼす可能性がある。
Peng Wangらは、2020年から2030年の間に、大規模な言語モデルに焦点を当てた生成AIによって発生する可能性のある電子廃棄物の量を予測した。この予測では、積極的なシナリオ(広範な応用)から保守的なシナリオ(より特定の応用)まで、生成AIの生産と応用の程度が異なる4つのシナリオを考慮した。研究者らは、廃棄物削減方法が考慮されないと仮定した場合、2030年には電子廃棄物の流れが年間250万トンに達するだろうと予測した。また、AIが最も成長するシナリオでは、2023年から2030年の間に生成型AIによって生み出される電子廃棄物の総量は500万トンに達することもわかった。Wangらはまた、このシナリオでは、発生する電子廃棄物には150万トンのプリント基板と、鉛やクロムなどの有害物質を含むおそれがある50万トンのバッテリーが含まれる可能性があると予測した。著者らは、循環経済戦略(既存のインフラの寿命を延ばしたり、主要なモジュールや材料を再製造工程で再利用したりする)を実施することで、電子機器廃棄物の発生を最大86%削減できることを示唆している。
この調査結果は、責任あるAIの使用と、汚染の有害な影響を減らすための積極的な電子廃棄物管理戦略の必要性を指摘している。
Wang, P., Zhang, LY., Tzachor, A. et al. E-waste challenges of generative artificial intelligence. Nat Comput Sci (2024). https://doi.org/10.1038/s43588-024-00712-6
doi:10.1038/s43588-024-00712-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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