Research Press Release
癌治療用免疫刺激性ナノ粒子
Nature Materials
2012年7月17日
免疫刺激性分子と免疫抑制因子阻害剤を数日間にわたって腫瘍に送達するナノ粒子ゲルが、今週のNature Materials電子版に報告されている。マウスのメラノーマ腫瘍にそのナノ粒子ゲルを注射することによって、免疫刺激性分子の持続的送達が促進され、腫瘍増殖が遅くなり、マウスの生存時間が大幅に延びた。
メラノーマなどの侵襲性の強い癌が免疫システムを回避する機序のひとつに、腫瘍による免疫抑制因子(TGF-βなど)の分泌がある。このタンパク質は、従来型免疫療法に用いられている免疫応答を調節するシグナル伝達分子、インターロイキン2の(IL-2)効果を阻害する。Tarek Fahmyらは、脂溶性のTGF-β阻害剤と水溶性のIL-2免疫刺激性タンパク質を分解性ポリマーゲルに封入し、それを脂質二重層で覆って保護したナノ粒子を設計した。Fahmyらは、そのナノ粒子が、担癌マウスの皮下および転移性メラノーマに対する先天性免疫応答と適応免疫応答の活性を高めることを明らかにした。
doi:10.1038/nmat3355
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
化学:アルゴリズムは、ウイスキーの最も強い香りと原産地を嗅ぎ分けることができるCommunications Chemistry
-
天文学:月の年齢はより古いNature
-
気候変動:南極の海氷減少が嵐の発生を促すNature
-
天文学:天の川銀河の超大質量ブラックホールの近くに連星系を発見Nature Communications
-
惑星科学:土星の環が若々しい外観を保っている理由Nature Geoscience
-
惑星科学:木星の衛星イオに浅いマグマの海はないNature