Research Press Release
細胞の移動を促進する応力の波
Nature Physics
2012年7月9日
成長の初期に私たちの体で起こる大規模な細胞移動は、成人における傷の治癒と同じ原理で生じている。つまり、細胞の移動を導く化学的な刺激に応答して、大きな単層のシート内を細胞が動くのである。今週のNature Physicsオンライン版で、細胞の移動には、物理的な力が関与するもう一つのフィードバック機構が働いており、この機構は化学的勾配の感知によるものより優れていることが示唆されている。
移動する時に、細胞は周囲に牽引力を加え、細胞間結合を通して相互に力を伝える。そのようにして、細胞集団全体の張力勾配が増加し、その結果最大応力の方向に細胞が移動する。 X Trepatと J Fredbergたちは今回、移動の前縁から細胞集団を通って伝播するゆっくりとした機械的な波によって、このような応力勾配が形成されることを報告している。
この観測結果は、細胞移動の時間スケールでは粘性応力が弾性応力より勝っているという長年考えられてきた仮説に疑念を呈するものだ。今回の研究で明らかになった応力と歪みの強化されたパターンは、物理的な過程によって細胞の移動が起こりうることを示す直接証拠であり、創傷治癒や形態形成、転移の初期段階に関与している可能性がある。
doi:10.1038/nphys2355
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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