Research Press Release
【量子物理】新たな「角度」からの量子通信への取り組み
Nature Communications
2012年7月18日
通信を行う者の間のアライメントに対する感受性のない量子通信の方法が実証された。この手法を用いると、実用的な量子通信に対する厳しい要件の一部がなくなり、人工衛星を用いた実験にも役立つ可能性がある。この成果を報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。
量子通信では、通常の経路では不可能な通信タスクを可能にする粒子間エンタングルメントのような量子物理学の特徴が利用されている。ただし、高精度の測定が必要とされるため、2つの通信者間で測定結果を比較するための共通の基準座標系が必要となる。今回、F Sciarrinoたちは、液晶デバイスを用いて、光子(情報を運ぶ量子ビット)を1つの状態から検出器の方向性に対する感受性のない別の状態に符号化して、この制約を回避した。すなわち、量子情報が光子の偏光に符号化され、この偏光が、液晶デバイスによって角運動量にマップされたのだ。通信の受け手は、別の液晶デバイスを用いて、両通信者の相対的な向きと関係なく、この情報を容易に読み取れる偏光状態に復号した。Sciarrinoたちは、この方法を数々の量子通信プロトコルで実証し、長距離通信や宇宙空間での通信など幅広い用途で、アライメントの不要な通信を実現できる可能性を示した。
doi:10.1038/ncomms1951
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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