Research Press Release
【物理】量子スピンアイスで観測されたヒッグス転移
Nature Communications
2012年8月8日
磁性材料の一種である量子スピンアイスにおける「ヒッグス」転移(ヒッグス粒子ではない)を示す証拠が得られた。この新知見は、量子スピンアイスが、創発的な量子電磁力学の特徴を観測できる凝縮体系の一つであることを示している。この研究結果を報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。
スピンアイスは、低温で単極子の励起が起こりうる物質状態だ。スピンアイスの物理学的性質は、最近、凝縮系物理学において大きな関心を集めたテーマだが、量子ゆらぎが際立った役割を果たす関連材料の挙動については解明が遅れていた。今回、小野田繁樹(おのだ・しげき)たちは、偏光中性子散乱を用いて、希土類材料であるチタン酸イッテルビウムの研究を行い、これをスピンアイスの量子版と考えうるとし、チタン酸イッテルビウムにおいて、創発的な磁気単極子のクーロン液体から強磁性体への「ヒッグス」転移が起こったことを報告した。
この観測結果で、凝縮体系内での創発的な量子相と素励起の解明に向けて一歩前進したと小野田たちは考えている。
doi:10.1038/ncomms1989
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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