Research Press Release
ALSの発症と進行に影響する遺伝的修飾因子
Nature Medicine
2012年8月27日
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症と運動ニューロンの生存を変化させる受容体の報告が寄せられている。
ALSでは、病気の発症や麻痺の進行速度が非常にさまざまで、何らかの遺伝子がこの多様性に影響していると考えられている。
Wim Robberechtたちは、軸索の成長にかかわることが知られているEPHA4という受容体の発現が、ALSの発症時期と患者の生存率に逆相関することを発見した。ALSとしては異例に長く生存する、血縁関係のない2人のALS患者で、EPHA4の発現や機能を阻害する変異が同定され、EPHA4の欠失が患者を守る働きをする可能性が示唆された。マウスでは、変性しやすい運動ニューロンほど、Epha4が高度に発現されている。さらにALSの齧歯類モデルでEpha4を遺伝的に欠失させたり、薬物により阻害したりすると、生存期間が長くなる。これらの知見は、Epha4が運動ニューロンの死やALSの発症時期、進行に影響することと、治療標的になる可能性があることを示している。
doi:10.1038/nm.2901
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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