Research Press Release
PKM2の活性化で腫瘍の増殖に対処する
Nature Chemical Biology
2012年8月27日
細胞内の代謝を調節する低分子活性化剤が腫瘍の増殖を妨げる、という研究成果が、今週のNature Chemical Biologyに掲載される。この知見は、がん治療法の開発の面から関心を集めると考えられる。
ピルビン酸キナーゼは解糖の最終段階を進める酵素である。解糖とは、ブドウ糖からエネルギーを取り出すと同時に、細胞にとって重要な同化代謝物を生ずる代謝経路である。ピルビン酸キナーゼにはPKM1およびPKM2の2種類があり、PKM1の方が高活性であるが、PKM2の活性変化は腫瘍細胞の存在と重なる。
Matthew Vander Heidenたちは、PKM2と特異的に結合して活性型酵素の形成を促進する低分子活性化剤群が腫瘍細胞の代謝を変化させて腫瘍の増殖を阻害することを明らかにした。この活性化剤群は、PKM2上の新たに発見された部位に結合し、増殖促進性代謝物を産生させる負のフィードバックループへの抵抗性をPKM2に与える。それにより、PKM2の持続的な活性化は、腫瘍細胞の同化栄養物供給を遮断すると考えられる。また、PKM2の活性化剤群は「酸化ストレス」と呼ばれる別の種類のストレスに対する感受性を腫瘍細胞に与えることから、PKM2の活性化を酸化ストレスの促進と組み合わせて腫瘍細胞を殺すという新たな治療法への扉が開かれる可能性もある。
doi:10.1038/nchembio.1060
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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