Research Press Release
腫瘍を抑制する脂質
Nature Chemical Biology
2012年8月27日
脂質C18セラミドが腫瘍抑制因子であるという発見が自食作用のパラドックスに関する洞察をもたらす、という論文が、今週のNature Chemical Biology(オンライン版)に掲載される。この研究は、がん治療法の開発に向けた新たな道筋を切り開く可能性がある。
細胞が自ら死ぬ方法はいくつもあり、自食作用と呼ばれるプロセスによるものもその1つである。条件により、自食作用は細胞の生存または死という正反対の結果を促進する。そのように全く異なる細胞の結末を制御するこの事象は、現在のところ解明されていない。
Besim Ogretmenたちは、脂質の一種であり腫瘍抑制因子と考えられているC18セラミドがLC3B-IIというタンパク質と相互作用し、それをミトコンドリアという細胞小器官の膜に結びつけることを明らかにした。また、ミトコンドリア膜でのLC3B-IIの持続的局在化がミトコンドリアの機能障害、および究極的には細胞死につながることも明らかにした。さらに研究チームは、C18セラミドの過剰産生がマウスの異種移植腫瘍の増殖を緩徐化させるのに十分であることも指摘した。
今回のデータを総合すると、C18セラミドが腫瘍抑制因子の活性を有し、抗がん物質の同定に向けた新しい道筋を切り開くことを裏付ける証拠がもたらされる。
doi:10.1038/nchembio.1059
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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