薬剤耐性CMLに対するキナーゼ阻害剤の標的外の相乗作用
Nature Chemical Biology
2012年10月1日
BCR-ABLと呼ばれるがん遺伝子を標的とする2つの薬物の標的外の活性が、ゲートキーパー変異の生じた慢性骨髄性白血病(CML)の細胞で相乗的かつ選択的に細胞死を誘発する能力を説明することが、今週のNature Chemical Biology(オンライン版)の論文で発表される。
BCR-ABLがん遺伝子の存在はCMLの典型的な特徴であり、選択的なキナーゼ阻害剤が患者に劇的な臨床治療的成果をもたらしてきた。BCR-ABLのいわゆるゲートキーパー残基での変異は、臨床使用が承認されているすべての薬剤に対する耐性をCMLに与える。そのため、その変異を有するCMLの新たな治療法を発見し、その有効性の基盤となる生物学的背景を明らかにすることは、重要な課題である。
Giulio Superti-Furgaたちは、ダヌセルチブおよびボスチニブという2つのBCR-ABL阻害剤を併用することが、その本来の標的であるBCR-ABLに対する活性とは無関係に、ゲートキーパー変異陽性のCMLに対して選択的に有効であることを明らかにしている。研究チームは、3通りのアプローチ(トランスクリプトミクス、ホスホプロテオミクス、およびケモプロテオミクス)を組み合わせ、MAPキナーゼがその生物学的相乗作用をもたらす標的外のツボであることを突き止めた。また、MAPKの下流で作用するがん遺伝子c-MYCの活性の変化がその薬剤の組み合わせの活性を説明する核心であることも示された。
doi:10.1038/nchembio.1085
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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