Research Press Release

【環境】新しい化学処理法を古い建物の保存に役立てる

Scientific Reports

2012年11月29日

英国のヨーク大聖堂のような歴史的な石材構造物を大気汚染物質による風化作用から守るために役立つ技術が開発された。この研究は、工学・自然科学研究会議(EPSRC)/芸術・人文科学研究会議(AHRC)のScience & Heritage Programmeの研究助成金で行われたもので、その結果を報告する論文が、今週、学術雑誌Scientific Reportsに掲載される。この研究結果は、石灰岩でできたほかの歴史的建造物の保存を促進するために利用できる可能性がある。

ヨーク大聖堂は、ヨーロッパ北部で最大のゴシック様式の大聖堂で、西暦600年頃に建設された。同時代のほかの多くの歴史的建造物と同様に、著しい速さで浸食が進んでいる。それぞれの時代の最高の材料を用いた定期的修復や復元が試みられており、それを原因として崩壊が加速したこともあった。

超撥水表面コーティングは、文化遺産の石造物を保護する1つの方法だが、現在入手可能なコーティングの多くは、石の微細構造をふさいで、その「呼吸」を妨げる作用がある。今回、K Wilsonたちは、自己集合した脂肪酸の単層と別のフッ素化化合物を組み合わせて、方解石上に撥水表面コーティングと超撥水表面コーティングを生成した。この処理方法をヨーク大聖堂の19世紀の石材に用いたところ、硫酸の浸透が抑制され、制御された乾燥、湿潤のいずれの二酸化硫黄環境においても石膏生成が鈍化した。

doi:10.1038/srep00880

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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