【海洋科学】サメの光り輝く「ライトセーバー」は捕食者に対する警告
Scientific Reports
2013年2月21日
小型の深海サメに風変わりな生物発光ディスプレイが発見された。カラスザメ科のベルベットベリー・ランタンシャーク(Etmopterus spinax)の背中には、防御用の鉱化した脊椎があるが、そのそばに光り輝く器官(発光器)が見つかり、これが、捕食者から身を守るための機構の一部になっているという考え方が示されている。
ベルベットベリー・ランタンシャークという深海魚は、ほかの数多くの深海生物と同じように、腹の部分が深海での太陽光に匹敵する明るさで継続的に光り輝いている。このプロセスをカウンターイルミネーションという。このサメの腹は、数千個の微小な発光器で覆われており、青緑色の発光が持続する。今回、J Claesたちは、このサメの背びれの前端からも光が出ており、脊椎のすぐ後ろにひときわ目立つ光の弧が形成されていることを報告している。Claesたちは、視覚モデリングを行い、ベルベットベリー・ランタンシャークの背中の発光は、その捕食者が数メートル先から感知できるが、その主たる被食者であるキュウリエソ属の一種Maurolicus muelleriは、近づかないと感知できない。このことは、ベルベットベリー・ランタンシャークの背部の生物発光が警告信号として作用して、もしかすると、脊椎自体を目立たせる方法で、接近する捕食者を寄せつけないようにし、同時に、被食者の捕獲が損なわれないようにしていることを示唆している。
こうした発光器の機能は仮説にすぎないことに注意すべきだとClaesたちは指摘するが、今回の観察結果は、警告的発光とカウンターイルミネーションという2つの一見矛盾する戦略が、同じ生物において同時に働いている可能性を示唆している。
doi:10.1038/srep01308
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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