Research Press Release
HIF-2αの低分子阻害剤
Nature Chemical Biology
2013年2月25日
がんの治療標的と考えられているHIF-2αの低分子阻害剤が同定された。この化合物を用いることで、HIF-2αを標的とすることが、がんの有効な治療法なのかどうかを確かめることができるだろう。
HIF-2αは、そのパートナーであるARNTとの組み合わせによって、多くのがん性腫瘍で存在する低酸素状態(低酸素症)における遺伝子発現の変化を制御する。HIF-2αに応答して発現する遺伝子は、細胞がこうしたストレスの多い状態に適応できるようにするが、これが、腫瘍細胞の生存を可能とする重要な機構である可能性がある。
今回、R Bruick、K Gardnerたちは、HIF-2αの低分子阻害剤が、HIF-2αの内部にある空洞と選択的に結合するが、HIF-1αなど他の近縁のタンパク質とは結合せず、HIF-2αとARNT間の相互作用を阻害することを報告している。この相互作用の阻害によって、HIF-2αが細胞の遺伝子発現と細胞の酸素ストレスに対する応答に影響を及ぼす能力が損なわれる。
doi:10.1038/nchembio.1185
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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