Research Press Release
【生化学】リン欠乏に対する防御
Nature Communications
2013年2月27日
イネを含む作物をリン欠乏から保護するうえで極めて重要な役割を果たす新たな脂質分子が発見された。リンは、植物にとって欠かせない栄養素だが、利用可能なリンの量が制限されている場合が多い。今回の研究で得られた知見は、リンが欠乏した過酷な環境での植物栽培で収量を増やすために有用となる可能性がある。こうした成果を報告する論文が、今週掲載される。
植物は、リンが制限された環境に適応する方法をいくつか発達させている。そのいくつかは、葉緑体膜脂質の組成の変化が関係しており、それによって、リンの動員が増強される。この過程を脂質の再構成という。今回、斉藤和季(さいとう・かずき)たちは、メタボローム分析を適用して、脂質の再構成を詳細に調べて、植物をリン欠乏から守る非常に重要な脂質分子GlcADGを新たに同定した。斉藤たちは、GlcADGがリン濃度の維持にとって必須ではないが、リンの利用が制限された不利な環境において、細胞小器官が正常に機能するうえで可能な限り最良の細胞状態を作り出すために寄与している可能性が高いという考え方を示している。
今回の研究成果は、リンの不足している地域での成長に対する適応性が高い植物を選定するための基盤となっている。
doi:10.1038/ncomms2512
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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